- 作成日:2026.10.29
- 更新日:2026.10.29
希望と違う求人、どこまで提案する?|キャリアアドバイザーの求人提案の考え方を解説
「この求人も合うかもしれない。でも、希望とは違うから紹介しないほうがいいかな」
求人を探していて、こう迷ったことはないでしょうか。
希望に合う求人だけを紹介すれば、本人がまだ知らない、よい選択肢を見落とすかもしれません。
一方で、よかれと思って幅広く紹介すると、「この人は、私の希望を聞いてくれない」と思われてしまうこともあります。そのまま連絡が取れなくなることもあるでしょう。
- 選択肢は広げたい。
- でも、希望を無視した提案にはしたくない。
この二つを両立するために欠かせないのが、提案の理由を伝え、反応を聞くことです。
大切なのは、なぜその求人を紹介するのかが本人にも伝わっていること。そして、紹介したあとの反応を聞いて、次の提案に生かすことです。
本記事では、希望と違う求人を提案するときの考え方と伝え方を、「次も教育業界で働きたい」という教員の方を例に解説します。
この記事の監修者
佐久間健光
株式会社ファンオブライフ 取締役|人材業界・教育業界など領域特化の転職エージェント事業を運営。年間数百名の転職・キャリア支援を行っている。また、自社の採用でも多くの人材業界経験者(キャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザー)との面談を実施中。YouTubeチャンネルで転職のノウハウや体験談を公開中。著書に「教育業界への転職のポイントがわかる本」がある。
目次 INDEX
希望と違う求人を提案するときの4つのポイント
希望と違う求人を提案するときは、次の4つを意識します。
1.キャリアアドバイザーの判断だけで、選択肢を閉じない
まず、求職者が最初に話してくれた希望だけで、紹介する求人を決めきらないことです。
人は、自分が知らない仕事を「やってみたい」とは、なかなか言えません。
- どんな仕事なのか。
- 誰の役に立つのか。
- どんな経験を生かせるのか。
それを知って初めて、興味を持つこともあります。
また、同じ希望でも、その背景は人によって違います。キャリアアドバイザーが「この業界を希望しているから、ほかには興味がないだろう」と除外すると、本人が判断する機会もなくなってしまいます。
希望にない仕事でも、その方にとってよい選択肢になると思う理由があれば、提案してみる。こうした姿勢が大切です。
ただし、紹介する求人の数を増やせばよい、という話ではありません。「この人にとって、どこがよいと思ったのか」を考えておく必要があります。
2.希望との違いと、提案する理由を伝える
次に大切なのが、キャリアアドバイザーの頭の中にある提案理由を、言葉にして伝えることです。
キャリアアドバイザーは話を聞いて選んだつもりでも、何の説明もなく求人を送ると、相手からはそのつながりが分かりません。「希望は伝えたはずなのに」と受け取られても、不思議ではありません。
希望と違う求人を紹介するときに伝えたいのは、次の3つです。
- 理解している希望:本人が何を大切にしていると受け止めたか
- 希望との違い:合わない部分も、こちらから伝える
- 提案する理由:それでも検討する価値があると考えた理由
「希望にぴったりです」と無理につなげる必要はありません。希望と重なる部分も、違う部分も説明したうえで、検討してもらいます。
決まった言い回しを覚えるというより、「あなたの話を踏まえて、この求人を選んでいます」と伝わることが大切です。
これは、家探しで考えると分かりやすいかもしれません。
通勤の負担を減らしたくて、「駅から徒歩5分以内の物件がよい」と伝えたとします。そこで、徒歩8分の物件を紹介された。物件情報だけが送られてきたら、「5分以内と伝えたのに」と思うでしょう。
しかし、次のように説明されたら、検討してみようと思うかもしれません。
「駅までは8分かかります。ただ、この駅なら乗り換えがなくなるので、職場までの時間は短くなります。通勤を楽にしたいと伺ったので、こちらも紹介しました」
もちろん、駅まで歩くこと自体に負担を感じる人には、合わないかもしれません。だから、紹介する理由を伝えたうえで、本人がどう感じるかを確かめる。求人提案も、これと同じです。
3.求人を知ることと、応募を決めることを分ける
三つ目は、求人を紹介することと、応募を決めてもらうことを、一度に進めようとしすぎないことです。
本人が考えていなかった業界や職種なら、まず、どんな仕事なのかを理解する時間が必要です。説明の途中で「では応募しましょう」と進めると、関心を持っただけなのに、決断を求められているように感じさせてしまうかもしれません。
関心を持ってもらえたら、気になる点を整理して、応募に進むかをすり合わせる。難しいと思われたら、その理由を聞く。知ることと決めることを分けると、求職者も迷っていることを話しやすくなります。
4.提案への反応を聞き、次の提案に生かす
最後に、求人を紹介したあとの反応を聞くことです。
「興味はありますか?」と聞いて、「ありません」と言われて終わってしまうと、次に何を紹介すればよいかが分かりません。応募しないという答えでも、その理由は人によってさまざまです。
具体的な求人を見て初めて、本人も「自分はここを大切にしていたんだ」と気づくことがあります。提案を通じて希望が具体的になり、次の提案がよくなる。そういう進み方もあります。
そして、聞いたことは、次の提案に反映します。
具体例:「次も教育業界で働きたい」という教員の場合
たとえば、学校の先生から、次のような相談を受けたとします。
- 現在、学校の教員として働いている
- 次も教育業界で働きたい
希望の背景を聞くと、別の業界も選択肢になる
この方は、なぜ教育業界を希望しているのでしょうか。
- 子どもの学びに関わりたいのか。
- 授業をつくることが好きなのか。
- 人が成長したり、次の一歩を踏み出したりするのを支えることに、やりがいを感じているのか。
同じ「教育業界を希望しています」でも、その背景は違います。
聞いてみると、「生徒の進路相談に関わり、次の一歩を支えることに、特にやりがいを感じている」という答えが返ってきたとします。
人の成長や選択を支えることにやりがいを感じているなら、人材業界の仕事にも、関心を持つ可能性があります。
もちろん、それだけで「この方には人材業界が合う」と決めることはできません。ただ、仕事内容を知ってもらう価値はありそうです。
理由と違いを添えて、求人を紹介する
この方に、何の説明もなく人材紹介会社の求人を送ったら、どう受け取られるでしょうか。
- 「教育業界を希望すると伝えたはずなのに」
- 「紹介できる求人を、とりあえず送っているのかな」
そう思われても、不思議ではありません。そこで、たとえば次のように伝えます。
「教育業界をご希望されているので、その方向で求人を探しています。そのうえで、一つ別の業界の仕事もご紹介したいと思いました」
「お話の中で、生徒の進路相談に関わり、次の一歩を支えることに、特にやりがいを感じていると伺いました。こちらの仕事にも、人の仕事選びを支える面があります。その点で、ご関心を持たれる可能性があると思ったんです」
このように伝えれば、少なくとも、なぜ紹介されたのかは分かります。
あわせて、希望と違う部分も、こちらから伝えます。人材紹介の仕事は、人の相談に乗るだけでなく、企業の採用を支援する仕事でもあります。営業として目標を持つこともあります。
教員の仕事と重なる部分もあれば、違う部分もある。そこまで説明したうえで、検討してもらいます。
まずは仕事内容を知ってもらう
人材業界は、この方がこれまで考えていなかった業界です。紹介してすぐに応募を勧めるのではなく、まずは仕事内容を理解してもらう時間を取ります。
「まずは仕事内容を知っていただいたうえで、選択肢になりそうか、一緒に考えられればと思います」
こう伝えれば、求職者も、気になる点や迷っていることを話しやすくなります。
反応によって、次に確認することが変わる
紹介したあと、どんな反応が考えられるでしょうか。
たとえば、「人の選択を支える点は面白そうですが、やはり子どもに関わる仕事がしたいです」という反応なら、支援する相手が子どもであることが大切だと分かります。
一方で、「仕事内容には関心がありますが、営業目標があることに不安があります」という反応なら、何を負担に感じているのか、どんな目標や働き方なのかを、もう少し具体的に確認する必要があります。
同じ「応募しません」でも、その理由によって、次にすることは変わります。
そして、聞いたことは次の提案に反映します。「子どもに関わりたい」と改めて確認できたのに、その点に触れず、子どもと関わる機会のない仕事を繰り返し送る。これでは、「話を聞いてもらえていない」と感じさせてしまいます。
提案全体の見せ方と、再提案の考え方
希望に近い求人と分けて紹介する
希望と違う求人を紹介するときは、紹介する順番や、全体の見せ方も関係します。
希望に近い求人があれば、そちらと、視野を広げるための求人を分けて紹介する。希望に近い求人を十分に紹介できないなら、その状況を先に説明する。
何も説明せず、別の方向の求人ばかり並べると、求職者は自分の希望がどう扱われているのか分かりません。
一度断られた方向でも、懸念を踏まえて提案する
一度断られたら、もう何も提案できないわけではありません。
求人への誤解があれば説明できますし、懸念を解消できる別の求人があれば、提案する意味もあります。
そのときは、前に聞いた懸念を踏まえて、今回の求人は何が違うのかを伝えます。先ほどの例で営業目標に不安があると分かったなら、その不安に関わる点で、今回の求人がどう違うのかを説明します。
提案に自信を持ちながら、本人の判断を尊重する
希望と違う求人を提案するとき、「参考までに」と添えるだけで、よい提案になるわけではありません。
何がその方に合いそうなのか。どこは確認が必要なのか。キャリアアドバイザーとしての考えは伝える。そのうえで、本人が判断できるようにすることです。
提案に自信を持つことと、本人の判断を尊重することは、両立できます。
すべての求人に興味を持ってもらう必要はありません。本人が難しいと判断した理由を理解し、その判断を尊重する。その積み重ねが、「別の選択肢も見てみよう」と思ってもらえる関係につながります。
選択肢を広げることも、希望を尊重することも、キャリアアドバイザーの仕事
希望と違う求人を提案するときに大切なことを、改めて整理します。
まず、キャリアアドバイザーの思い込みで、可能性のある求人を除外しないこと。本人が知らない選択肢を紹介することも、キャリアアドバイザーの役割です。
次に、希望と違う求人を紹介するなら、違う点と、それでも紹介する理由を伝えること。希望を理解していることが、相手にも伝わる必要があります。
そして、提案への反応を聞いて、次の提案に反映すること。提案を通じて、その方に合う選択肢を、より具体的にしていくことが大切です。
選択肢を広げることも、本人の希望を尊重することも、どちらもキャリアアドバイザーの仕事です。
「なぜこの求人を紹介するのか」を伝えて、「どう感じたか」を聞く。まずは、日々の提案でこの二つを意識してみてください。
ご自身のキャリアを考えるときも、希望とは違う選択肢を、理由とあわせて見てみると、自分が大切にしたいことに気づけることがあります。
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この記事の監修者
佐久間健光
株式会社ファンオブライフ 取締役|人材業界・教育業界など領域特化の転職エージェント事業を運営。年間数百名の転職・キャリア支援を行っている。また、自社の採用でも多くの人材業界経験者(キャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザー)との面談を実施中。YouTubeチャンネルで転職のノウハウや体験談を公開中。著書に「教育業界への転職のポイントがわかる本」がある。

